発達時期に応じた運動

子供にスポーツの習い事を始めるのはいつからが良いのか?と疑問に思う親は少なくないでしょう。
下記にある「スキャモンの発達・発育曲線」というものがあります。子供の成長過程において、身体各機能の成長・発達に十分に考慮した運動環境を与えてあげる必要があり、脳の発達から考えても、幼児期に様々な運動経験をしておく事が重要なのです。

スキャモンの発育発達曲線(図)を見ると、5~8 歳頃(プレ・ゴールデンエイジ)に神経型が著しく発達するのがわかります。脳をはじめとして体内にさまざまな神経が張り巡らされていく大事な時期なのです。
この時期には、常に刺激をからだが求める特徴があり、飽きさせないで楽しませる運動メニューが必要ですが、型にはめこまず遊びの中の自由な動きや発想から子ども達の成長を促していきます。

多面的な基礎づくりを行えば行うほど、次にくるゴールデンエイジ(9 歳~12 歳頃)、さらには将来への準備になるのです。
第一線で活躍するスポーツ選手は、コーディネーション能力が高く、その多くが子どものころに人一倍さまざまな遊びを体験しています。
遊びにかぎらずいろいろなスポーツを経験しているほど、専門種目を習得する際の伸び に違いが出てきます。遊びやさまざまなスポーツを通して、基本的な動きを体験し、自然と神経系や感覚器が刺激されているためなのです。【※グラフにある年代以外では成果がないというわけではありません。年齢に関係なく運動した方が、体に刺激を与え成果は上がります】

様々な動きを楽しく身につける

幼児期は運動機能が急速に発達し、多様な動きを身に付けやすい時期です。この時期には、 多様な運動刺激を与えて、体内に様々な神経回路を複雑に張り巡らせていくことが大切です。 それらが発達すると、タイミングよく動いたり、力の加減をコントロールしたりするなどの運 動を調整する能力が高まり普段の生活で必要な動きをはじめ、とっさの時に身を守る動きや将来的にスポーツに結び付く動きなど基本的な動きを多様に身に付けやすくなります。

体を動かす遊びには、特定のスポーツ(運動)のみを続けるよりも多様な動きが含まれます。

例えば、「シッポ取り」(鬼ごっこ)をすると「歩く、走る、くぐる、よける」などの動きが含ま れます。幼児が楽しんで夢中になって遊んでいるうちに多様な動きを総合的に経験する ことになります。幼児期は、トレーニングのように特定の動きばかりを繰り返したり、運動の頻度や強度が高過ぎ、 特定の部位にストレスが加わるけがにつながったりしないよう、楽しく多様な動きを獲得できるようにメニューを考えています。 

文部科学省で平成 19 年度から 21 年度に実施した「体力向上の基礎を培うための幼児 期における実践活動の在り方に関する調査研究(以後、文部科学省調査という。)」では、 より多くの友達と活発に遊びを楽しむ幼児ほど運動能力が高い傾向にありました。
楽しく体を動かす遊びは、運動を楽しむための基礎的な 体力や運動能力を発達させるだけでなく、複数の友達との関わりを通して、コミュニケー ション能力、やる気や集中力、社会性や認知的能力などを育む機会を与えてくれます。
発達の個人差が大きい幼児期であることを考慮しながら、十分に体を動かす気持ちよさを体験し、自ら体を動かそうとする意欲が育つよう、多様な動きが含まれる遊びをバリエーション豊かに楽しめるような工夫が必要です。 

幼児は1日60分以上の運動時間が望ましい

多様な動きの獲得のためには、時間的な保障も大切な視点です。一般的に幼児は、 興味をもった遊びに熱中して取り組みます。
しかし、友達が他の遊びをしていたり、新しい遊具に関心をもったりすると自発的に遊びを次々と変えていく場合も多く見られます。

楽しい遊びが提供された上にある程度の時間を確保すると、幼児はその中で様々な遊びをし、結果として多様な動きを獲得することにつながります。 文部科学省調査では、外遊びをする時間が長い幼児ほど、体力が高い傾向にありましたが、4 割を超える幼児の外遊びをする時間が 1 日 1 時間(60 分)未満でした。 幼児にとっては、幼稚園や保育園などに登園しない日でも体を動かす必要がありますから、保育者だけでなく保護者も共に体を動かす時間の確保について工夫することが望まれます。

幼児が体を動かす時間は、世界保健機関(WHO)をはじめとして、多くの国々では、幼児を含む子どもの 心身の健康的な発達のために「毎日、合計 60 分以上の中強度から高強度の身体活動※」 を推奨しており、この目安は現在の世界的なスタンダードということができます。